【ベネクスのモノづくりインタビュー】KAJI GROUP テキスタイル事業部次長 梶川正弘氏Vol.1 前代未聞の素材と向き合い、品質を極めるカジニットとベネクスの歩み

スペシャル / ベネクス

VENEXリカバリーウェアは、国内で高品質を誇る職人たちの手によって、皆さまの元へと届けられています。川上から川下までバトンをつなぎながらすべてを一気通貫で行うベネクスのモノづくり。これまでなかった「リカバリー」という価値を築いてきた私たちのパイオニア精神は⽣地開発や商品づくりにも息づいています。

そんな私たちの取り組みを伝える、モノづくりインタビューの第3弾。

今回は、石川県で「日本の繊維を元気にする」をミッションとして掲げ、世界的に有名なブランドのモノづくりも手掛けるKAJI GROUPの、丸編み素材を担う「カジニット」へ訪問しました。ベネクス商品企画部メンバーとともに、KAJI GROUP テキスタイル事業部次長の梶川正弘さんへ、VENEXリカバリーウェアのモノづくりにかかるこれまでの歩みについて伺いました。

RLスタッフ:私は今回はじめての訪問で、完成前のVENEXリカバリーウェアの生地が作られる様子を拝見できると、とても楽しみにして来ました。商品企画部からも編立の工程で、様々な苦労がある中でともに乗り越えてくださっているとお聞きしています。早速ではありますが、まずベネクスとの最初の出会いについてお伺いできればと思います。

梶川さん:一番はじめは、中村社長と当時の開発担当の方にお越しいただきました。たしか2014年あたりだったと思います。お会いする前にベネクスさんの「PHT繊維※1」について調べさせてもらったのですが、どうやら硬い繊維で、編立の針の摩耗(こすれ合って、表面が削れること)が激しいという情報を見かけました。
それから来社いただいたときに中村社長と色々な想いや商品の説明をしていただいたのですが、針の摩耗のことがずっと心配で、正直最初からお断りすることを決めていました(笑)その時は、針だけでなく編み機自体も壊れてしまうのではという怖さもあったんですよね。

※1:PHT繊維...VENEXリカバリーウェアすべての商品に使われている、独自開発の特殊繊維(ポリエステル)。ナノプラチナなどの鉱物を繊維一本一本に練り込んでいます。

RLスタッフ:衝撃のスタートですが、そこからどうしてベネクスと取り組もうと思っていただけたのでしょうか。

梶川さん:その後2018年だったと思いますが、都内で開催していた素材の展示会に出展していたところ、井口さんと当時の企画の方に出会いました。

井口:その時「KAJI GROUP」さんのブースですごく惹かれる生地があって、どうしてもこの生地で企画したいと思い、私からアプローチしました。

梶川さん:ご挨拶したときに、聞いたことのある会社だなと思って(笑) そこで、以前中村社長からお話しをいただいたことを伝えました。

井口さんとお話しするうちに、やっぱり食べず嫌いはダメやなと思ったんです。その時弊社も新しいことにどんどん挑戦したいという想いがありましたし、とにかく一回やってみよう!と思ってお取り組みすることを決めました。

RLスタッフ:実際取り組んでみて、思っていたのと違うな、上手くいかなかったというのはどのような点でしたか。

梶川さん:最初は試験的にやってみるので上手くいって、「全然いけるやん」と思ったのですが、大変なのはそのあとでした。量産になると最初お断りをした際に懸念していた、編み針が削れるという問題、その傷みの速さに驚きました。

期間としては、通常だと針の交換まで1.5年なのに対し、ベネクスさんの生地は約3か月に1回です。実際、針が摩耗してくるとこのように生地に経筋が入ってしまいます。針交換をしないとこの筋がずっと出続けてしまうんです。

RLスタッフ:お手数をおかけしております...!普段は完成した製品ばかりを目にしているので針の摩耗による影響を実際に見たのは初めてです。ありがとうございます。

現在カジニットさんには、『コンフォートポンチ』『コンフォートタッチ』、そして弊社がBtoBで販売している『トレーナーズクロス』の生地をつくっていただいていますよね。それぞれの開発の経緯などをお聞きできればと思います。

井口:もともとは、展示会で私が一目ぼれした素材と、他に2素材を基に開発に挑戦しました。一目ぼれした素材は私の諦めの悪さもあり、何度も試作いただきましたが品質の課題が大きく量産化は実現できませんでした。そこで、まずは取組みを進めるためにどうすべきか考え、はじめに開発に着手した3素材の中から最も完成度の高かった『コンフォートポンチ』の生地を進める方向で相談させていただきました。

梶川さん:この生地がベネクスさんとのスタートですね。本当に色々な苦労がありました。

井口:『コンフォートポンチ』を一番最初に発売したのは、2020年の秋冬シーズン。季節に合わせてあたたかみのあるカラーで販売を開始しました。現在では通年お使いいただけるアイテムとしてお客様にも好評のシリーズですが、当初は秋冬限定だったため、かなり秋冬に振り切ったカラー展開で生地の厚みとギャップが生まれるなどの課題が残りました。

梶川さん:また『コンフォートポンチ』の生地は、耐光性(光による変色や退色に対する耐久性)を考えて改善しようとすると、今度はピリング(毛玉)の問題が出てきて、そこのバランスを取るのが難しかったです。どっちか我慢しなければいけないのではとなっていたのですが、最後までこだわるのがベネクスさんですね。

井口:セットアップとしてリニューアル発売した2023年には、前回のカラーの反省点を反映し、お客様に手に取っていただけるような企画にするべく、何色も試験して決めていきました。試験の依頼時は「絶対に売れる色にしたいので」とお願いしましたね(笑)。

西浦:企画チームでも何回も色について打ち合わせも重ねましたし、価格もはじめての方に手に取っていただきやすい価格の実現に向けて、調整させていただきました。

RLスタッフ:その苦労を乗り越えて、2023年には、セットアップとしてリニューアル登場し、以降みるみる弊社の人気シリーズへと成長しました。今では弊社で1位2位を争うほどの人気ですが、皆さまに愛していただけるシリーズになったのは、こうして緻密にコミュニケーションをとっていただき、ご一緒に改善点について考えてくださった背景があったのですね。

井口:そして肌触りの面で評判が良かった『コンフォートポンチ』だったので、それを活用して新しい企画ができないかとまた相談しました。

梶川さん:そこで起毛をかけるのはどうかと提案して、『コンフォートタッチ』が誕生しました。起毛をかけることで毛羽の間に空気を含むため『コンフォートポンチ』よりもあたたかさが生まれると思ったんです。

井口:さらに袖口や裾にリブにすることでそのあたたかい空気を逃がしにくくするなど工夫をしましたね。リブの素材も『コンフォートタッチ』に合わせてオリジナルで開発いただきました。起毛も微起毛にこだわっていたので、起毛加工の回数を調整したり、安定的に起毛をかいていただけるよう加工場さんへのご協力をお願いしました。

西浦:起毛の回数によって、起毛感が全然違ってくるんですよね。沢山かくともっとふわふわになるので。

井口:ただこの生地は組織上、いわゆる裏起毛などのふわふわ感は出ません。そこで『コンフォートタッチ』はあえて"ふわサラ"な肌ざわりをテーマにし、理想に近づけるため何度も試験を重ねました。梶川さんとも何度も加工場さんを訪ねてすり合わせをしました。

RLスタッフ:『コンフォートタッチ』のあの起毛感には、こだわりが詰まっているんですね。

梶川さん:『コンフォートポンチ』と『コンフォートタッチ』は綿が60%入っていますよね。実は、北陸では綿を使った生地はあまり主流ではないんです。合繊、ポリエステルやナイロンなどの産地なんですが、弊社は、ベビー服の生地をつくっていることもあったので、綿と合繊の難しいところも理解しながらできたから実現できたと思っています。

RLスタッフ:カジニットさんだからこそ、この『コンフォートポンチ』と『コンフォートタッチ』を一緒に作らせていただけているのですね。これらのシリーズに対する愛情がより一層深まりました。
弊社がBtoBやサポートチームなどで提供している『トレーナーズクロス』もつくってくださっているんですよね。こちらはプリントが難しいとお聞きしました。

梶川さん:これがまた大変なんですよね。

井口:抜染プリントという技法を使っていて、一度染めた生地の色を抜いて、プリントするという方法でつくっている生地です。国内でもこの方法をやっている工場さんが本当に少ないんです。

梶川さん:しかもニットでできるというのもなかなかないですね。

RLスタッフ:この商品はスポーツチームに提供したりしているんですけど、本当に丈夫で、沢山活用いただいているというお声を多くいただき、大変喜ばれています。

梶川さん:それは、うれしいです。しっかりした生地ですし、傷みにくいので、まさにサステナブルな商品ですよね。

RLスタッフ:素敵なモノづくりをご一緒していただき、改めてありがとうございます。

■Profile

KAJI GROUP テキスタイル事業部次長

梶川 正弘

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