【特別インタビュー】ラグビー選手 山下裕史「強さは、整える力から。山下裕史が語るリカバリーの極意」

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NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25シーズン、コベルコ神戸スティーラーズはリーグワン発足以降、最高順位となる3位でフィニッシュ。復活への手応えを感じさせる1年となりました。
そのチームの内側で、39歳の現役プロップとして歴代最多198試合出場を誇り、チームの大黒柱として活躍を続けるのがアンバサダーの山下裕史選手です。ベテラン選手として、そして神戸を愛する一人のラガーマンとして――。そんな山下選手に、再度インタビューをさせていただきました。

RLスタッフ:山下選手は社員選手で、ラグビーと仕事を両立されていますが、普段どのようなお仕事をされているのでしょうか?

山下選手:環境防災管理室で働いています。現在は津波避難標識の設置プロジェクトを担当していて、設置場所の選定から、大きさ、夜間視認性の確保など、現場との調整を行っています。管理職という肩書きはありますが(笑)、実際は一番下っ端として日々勉強させてもらっています。

RLスタッフ:仕事とラグビーの両立は大変そうですが...

山下選手:会社には本当に感謝しています。ラグビーに専念させてくれて、試合や遠征、合宿などがあるたびにスケジュールを調整してくれたり、全面的にバックアップしてくれています。社業とラグビーを両立できる環境を整えてくれる会社の存在は大きいですね。

RLスタッフ:具体的な1日のスケジュールを教えていただけますか?

山下選手:5時に起きて、6時にはクラブハウスでトレーニングをしています。その後は出社して通常業務をこなします。ラグビー選手としてのトレーニングと会社の仕事、どちらも全力で取り組んでいるので、時間をうまく使うのが本当に大切です。実は、シーズン中よりも今のオフシーズンの方が大変です(笑)

RLスタッフ:それはなぜなのでしょうか?スポーツ選手だとシーズン中の方が大変なイメージがありますが...

山下選手:年齢的なこともあって、完全にオフにしてしまうと次のシーズンで体が動かなくなってしまうからです。そのため、オフシーズンでも朝のトレーニングは欠かせません。5時に起きて、6時からクラブハウスでトレーニングを行い、その後は出社して通常業務をこなすという日々を送っています。特にシーズンオフは、しっかりと体を作り直さないと、シーズン中にパフォーマンスが落ちてしまうので、トレーニングの重要性を強く感じています。
実は、2012年頃からこの朝型のスタイルが自分に合っていると気づきました。それまでは、夜にトレーニングをしていた時もあったのですが、朝早くから体を動かす方が、1日のリズムが合っていると感じました。今では、朝のトレーニングが自分のルーティーンとなり、体調やメンタル面でも良い影響を与えてくれています。

RLスタッフ:39歳の今も最前線で活躍されている、山下選手のコンディション管理の秘訣を教えていただきたいです。

山下選手:練習後やトレーニング後には、アイスバスを欠かさないようにしています。体を冷やすことで、疲労回復や筋肉のケアに効果があるんです。最近では、それを見て一緒にやる若い選手も増えてきました。2223歳の若い選手には、まだリカバリーの大切さの実感が湧かないことが多いと思うので、30代になって振り返った時に「あの時、山下さんが言っていたことはこういうことだったんだな」と思ってもらえれば、それで十分だと思っています。あとは、昼寝も大事ですね。昼休憩に20分程度の仮眠を取ったりしています。寝すぎると逆効果になることもあるので、アラームをセットして、ちょうど良い時間に目を覚ますようにしています。この少しの休息が、午後の仕事やトレーニングに向けたエネルギーをしっかりと補充してくれるんです。

RLスタッフ:休養学の観点からみても、短時間の睡眠は体と心のリフレッシュにはとても有効だというデータがあります。オンオフの切り替えはどのようにされていますか?

山下選手:実は、お酒を飲むのが大好きなんです。友人や知り合いとワイワイ飲むのが好きなので、それが自分の中でいいリフレッシュになっています。オフ期間中は遅くまで飲むこともありますが、それでも翌朝6時のトレーニングは絶対に欠かしません。好きなことを「悪者」にしたくないんです。自分の楽しみや趣味を制限するのではなく、うまく両立させる方法を考えています。これはラグビーだけでなく、子供にも同じことを伝えています。例えば、「ゲームをしたから宿題ができない」と言うのではなく、「ゲームと宿題をどう両立させるか?」を考えるように、と。
お酒を楽しんだ次の日でも、ちゃんとトレーニングをこなすことで、自分の中でバランスを取っています。大切なのは、好きなこととやらなければいけないことを両立させること。このオンオフの切り替えが、日々のケアに繋がっているのだと感じています。

RLスタッフ:レジェンドクラスの山下選手においても、日頃の準備をきちんとされているのですね。今後の選手としての目標はなんでしょうか?

山下選手:まずはTL/LOリーグ戦通算200キャップ出場達成が目標です。ただ、年齢も年齢なので、まずは怪我なくシーズンを過ごすことが第一ですね。

RLスタッフ:引退後の展望はどのようにお考えでしょうか?

山下選手:引退後は、会社の業務に本格的に戻る予定です。ただ、目標は体重を100キロ以下にすることですね(笑)現役時代とは違って、体を動かす機会が減る分、生活リズムの調整が必要になります。仕事中心の生活になっても、健康づくりはしっかり続けていきたいと思っています。

Profile

山下裕史(やました ひろし)選手
198611日生まれ、大阪府四條畷市出身。現在はNTTジャパンラグビー リーグワン1部の「コベルコ神戸スティーラーズ」に所属するラグビー選手。身長:183cm/体重:120kg、ポジションはプロップ。都島工業高校から競技を始め、京都産業大学では「大学一」の右PRと言われ、大学選手権ベスト4にも貢献。神戸製鋼コベルコスティーラーズ(現:コベルコ神戸スティーラーズ)では2度のトップリーグ「ベスト15」を受賞。ラグビーワールドカップ2015イングランド大会にも出場した国際経験豊富なベテランPRとして、チームの要として活躍中。

〈経歴〉
2008年 神戸製鋼コベルコスティーラーズ(現・コベルコ神戸スティーラーズ)に加入
2009年 日本代表 選出
2015年 ラグビーワールドカップ2015イングランド大会に日本代表として出場
2016年 スーパーラグビー・チーフスに期限付きで加入
2019年 スーパーラグビー・サンウルブズに加入

〈所属チーム歴〉
都島工業高校 -   京都産業大学 - コベルコ神戸スティーラーズ - チーフス - サンウルブズ - 現在:コベルコ神戸スティーラーズ

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