【Think Athleteインタビュー】タッチラグビー 奈良秀明選手「海外挑戦で得た学びと、長く競技を続けるためのリカバリー」

Think Athlete / スポーツ

目標に向かい進み続けるために、コンディショニング作り、そしてアスリート人生を設計できる方を、Think Athleteと定義。ベネクスとしては、リカバリー環境のサポートにより、悔いのないアスリート生活、人生のサポートをすることを目指しています。

今回はThink Athleteの第22弾は、タッチラグビー日本代表経験を持ち、現在も競技の普及や指導・現役でのプレーに力を注ぐ奈良秀明選手にお話を伺いました。
海外での挑戦から得た学び、指導者としての想い、そして年齢を重ねる中で取り組むリカバリーや睡眠の工夫について語っていただきます。

RLスタッフ:まずはご経歴を教えてください。

奈良選手:僕は東京都町田市で生まれ育ちました。子どもの頃から外で遊ぶのが大好きで、特に兄と一緒にボール遊びをする時間が一番の楽しみでした。週末はほとんど野球漬けで、練習後も友達と公園で素振りやキャッチボールをしていました。親には「そんなに夢中になって大丈夫?」と心配されることもありましたが、僕にとってはそれが最高の時間でした。ボールを通じて仲間とコミュニケーションする楽しさや、自分の成長を実感する喜びがありました。

RLスタッフ:大学では野球からタッチラグビーに切り替えたそうですね。

奈良選手:はい。日本体育大学に進学した際、野球はもう続けるつもりはなく、競技を変更したいと思っていました。そして入学してすぐにタッチラグビー部の存在を知りました。きっかけは当時の部のキャプテンだった兄の友人が声をかけてくれたことです。正直、最初は日本代表には興味はありましたが、自分に合っているかどうかは半信半疑でしたし、タッチラグビーという名前を聞いたとき、どんな競技か想像はあまりついていませんでした。でも実際に体験してみると、スピード感や戦術性の高さにすぐに魅了されました。

RLスタッフ:タッチラグビーのどんなところに惹かれましたか?

奈良選手:一番はフラットな競技環境ですね。タッチラグビーは年齢や性別に関係なく、一緒にプレーができ、誰でも活躍できるところが魅力でした。自分のスピードや反応と野球で培ったハンドリングを生かしてボールを追いかけ、最初のころはウィング*として役割を見つけ、トライや最後の砦としてDFをする瞬間は、本当に楽しかったです。また、試合中の連携や戦術を考える楽しさもありました。個人技だけでは勝てないけれど、チームの動きがうまくハマった瞬間、一瞬で得点が決まる。そのスピード感や一体感に夢中になりました。

RLスタッフ:その後、大学を卒業してから海外に行かれたとお伺いしました。なぜ数ある国の中で、オーストラリアを選ばれたのでしょうか?

奈良選手:世界で最もタッチラグビーが強く、盛んな国がオーストラリアだったんです。日本で続けるのも楽しかったですが、もっと高いレベルで挑戦したいと思い、渡航を決めました。英語を学ぶためではなく、純粋に競技力を磨くためです。初日にクラブを訪れたときは驚きました。街の雰囲気も、クラブの規模も日本とは全く異なり、大会では30面以上のコートがあり、毎日複数の試合が組まれていました。

RLスタッフ:海外と日本の違いなどはありましたか?

奈良選手:試合のスピード、体格差、戦術の精密さは日本とは比べものにならないレベルで、最初の1か月は本当に苦しかったです。慣れない環境、異なる戦術、言語の壁もあり、思うように動けない日も多くありました。しかし、その苦労が自分を成長させる最大のチャンスだと感じました。

RLスタッフ:具体的にはどんな部分で苦労しましたか?

奈良選手:まず試合スピードの違いです。日本では技術差で勝負が決まることもありますが、オーストラリアではスピードと判断力・技術差とすべてが必要でした。ボールが来る前に動き、次のプレーを予測することがより求められました。また、戦術の理解も大変で、コーチやチームメイトが英語で説明する指示を、実際のプレーに落とし込むまでに時間がかかりました。それでも、毎日の練習と試合を通じて少しずつ対応できるようになり、自分の成長を実感できた瞬間はすごくうれしかったです。

RLスタッフ:その後、帰国してから会社員を経験し、再度ニュージーランドに渡りますよね。ニュージーランドでの経験はいかがでしたか?

奈良選手:オーストラリアとは異なるスタイルでした。こちらはかっちり戦術というよりは、よりフィジカル重視で、体のぶつけ合いや瞬発力を求められる場面が多かったです。初めは体格差で押し負けることもありましたが、トレーニングはもちろん、現地のタッチラグビーに順応し、自分の役割をみつけ、存在をアピールすることで対応しました。
言語の壁も大きな課題でした。英語で指示を理解するだけでなく、非言語コミュニケーションも重要ですし、ジェスチャーや目線、微妙なタイミングの動きで意思を伝える技術を学びました。これは帰国後の指導者活動でも非常に役立っています。

RLスタッフ:奈良さんは現在、町田ゼルビアのスポーツスクールでコーチも務められていますよね。選手としての活動と指導者としての役割を両立される中で、体調管理やリカバリーにはどのように取り組まれているのでしょうか?

奈良選手:37歳を過ぎてからは、リカバリーの重要性をこれまで以上に強く意識するようになりました。若い頃は多少無理をしても翌日には回復できましたが、年齢を重ねるにつれて疲労が蓄積しやすくなり、ケアを怠るとパフォーマンスに直結してしまうことを実感しています。

RLスタッフ:年齢とともにケアを大事にしてこられたんですね。

奈良選手:はい。日常生活の中では、ストレッチや鍼治療、電気治療器具を使ったコンディショニングを欠かさず行っています。さらに、ベネクスのリカバリーウェアも愛用していて、特に長時間の飛行機移動の際には必ず着用するようにしています。そうすることで、翌日の疲労感が大きく軽減され、練習や指導にすぐ集中できる状態を作れるんです。

RLスタッフ:弊社の商品を日常のリカバリーに取り入れていただけて、とても光栄です。加えて、リカバリーの環境づくりにも工夫をされていると伺いました。具体的には、どのようなことに取り組まれているのでしょうか?

奈良選手:質の良い睡眠を取るために寝具を工夫したり、就寝前の習慣を意識したりと、小さな積み重ねを大事にしています。過去には栄養面でもバランスを意識し、食事から回復力を高めることを心がけた時期もありました。今はストレスないよう食べたいもの食べています。リカバリーは単に疲れを取るだけの時間ではなく、次のパフォーマンスにつなげるための大切な準備期間です。だからこそ「練習や試合と同じくらい重要なもの」と位置づけて、日々取り組んでいます。

RLスタッフ: 有意義なお話がたくさん聞けて良かったです。今後の目標や夢はありますか?

奈良選手: これからもタッチラグビーを広め、より多くの人に楽しさを伝えていきたいです。特に子どもや若手選手が競技を通じて成長できる環境を作ることが目標です。個人的には世界大会でさらに上を目指し、健康を維持しながら長くプレーを続けたいと思っています。また、リカバリーや体調管理の知識を広め、アスリートとしての寿命を延ばす手助けもしていきたいです。

RLスタッフ:弊社は「世界のリカバリー市場を創造し、そこに関わるすべての人を元気にする」ことを目指しています。「世界で出会った人々をタッチラグビーを通じて笑顔・幸せにすること」を掲げて活動されている奈良選手とこれからもともにリカバリーの輪を広げていけたらうれしいです。

※ウイング:両サイドに位置するポジションで、チームのトライゲッター(ボールを受けて相手の守備を突破し、得点を奪う)

Profile

奈良秀明(なら ひであき)
1983年329日生まれ、東京都町田市出身のタッチラグビー選手。
2001年より日本代表でプレーし、通算6回のワールドカップに出場。
2015年にニュージーランド式ステップ指導プログラムを開発、ラグビーのみならずラクロス、サッカー等他競技でも指導。同年、日本初のタッチラグビースクール「町田ゼルビアBLUES」(JリーグFC町田ゼルビアのスポーツスクール)を設立し、小学生を対象にタッチラグビーの普及活動にも力を注いでいる。

〈チーム歴〉
都立忠生高校 - 日本体育大学 - 城南ジョーカーズ

〈主な日本代表歴〉
2001-2002:NSW State cup in Australia
2003: Touch world cup in Japan 4位
2007年:Touch world cup in South Africa 4位 日本チームMIP
2011年:Touch world cup in Scotland 4位 日本チームMIP
2012年:NSW State cup in Australia & NZ National championship
2014年:Australia National Touch League
2015:Touch world cup in Australia 5位
2016-2017年:Transtasman Series 国際テストマッチ
2018年:Australia National Touch League
2019年:Touch world cup in MalMalaysia 3位
2023年:Transtasman Series 国際テストマッチ
QLD State cup マスターズ30歳クラス
2024年:Touch world cup in England マスターズ30歳クラス5

〈書籍〉
「魔法のように人をズラすラグビー最強のステップ」

  • copied