【Think Athleteインタビュー】ライフセーバー 三井結里花選手 Vol.7「頼ることは勇気がいる。それでも産後ママには『頼ってほしい』」

Think Athlete / スペシャル

目標に向かい進み続けるために、コンディショニング作り、そしてアスリート人生を設計できる方を、Think Athleteと定義。ベネクスとしては、リカバリー環境のサポートにより、悔いのないアスリート生活、人生のサポートすることを目指しています。

今回はThink Athleteの第四弾として、ライフセーバー三井結里花選手に取材をさせていただきました。

前回までの記事はこちら→【Think Athleteインタビュー】ライフセーバー 三井結里花選手 Vol.6「ママアスリートサポートの現状」 | 休養・リカバリーウェアのVENEX(ベネクス) (venex-j.co.jp)

RLスタッフ:お家のことを回すこと、考えるのは母親である私だとおっしゃってました。ご苦労や、工夫されていることはありますか。

三井選手:出産前と大きく違うのは時間を決めてやるようになったこと。特に夕方以降の生活に関して、効率をかなり考えるようになりました。出産前は日が暮れた後もランニングなどの練習はできるので、時間をシビアに決めていませんでした。今は日が暮れようとなかろうと、6時からは寝るための準備を始める感じです。お風呂に入れて、ご飯食べさせて、寝かし付けと、子どもの生活を一定にするためにも時間を決めて動くようにしています。

RLスタッフ:競技と子育ての両立のためにタイムマネジメントをしっかりされているのですね。母となった三井選手のこれからの競技人生についてもお聞かせいただけますか。

三井選手:昨年金メダルを取ることができた、パドルボードの世界選手権が今年も予定されていて、まずはそれに挑戦し続けたいですね。あとはハワイで行われる、約6時間かけてパドルボードを漕ぐMolokai 2 Oahu(モロカイ・トゥー・オアフ/モロカイ島・オアフ島海峡横断レース)を成し遂げたいなっていう思いが芽生えたりもしています。

RLスタッフ:新しいことに挑戦するエネルギーはどこから生まれるのでしょう。

三井選手:家族ですね。前回の世界選手権では、夫も日本代表として一緒に出場したのですが、家族で何かに挑戦するってことは、本当に大変だったんですけど、刺激的だし、宝物であり財産だなって。今まで誰も挑戦してないことを、これからも家族で目指すことによって、誰かに勇気を与えられるようなことができたらいいなと思います。

RLスタッフ:何にも代えがたい強固な家族の絆ができますね。

三井選手:そうですね。でも実は、子どもができて効率を重視するがゆえに、夫と意見の食い違いが多くなり、衝突することが多くなって。出産前は本当に喧嘩もなく、意見が食い違うことって何にもなかったんです。自分たちでもびっくりしているぐらいです()

RLスタッフ:大切なものができたからこそですね。「うちも!」という声が聞こえてきそうです。

三井選手:まあ、そんなこともあったんですけど、子どもが一瞬一瞬成長していくのを目の当たりにして、成長に合わせて家族で挑戦することは、どれを取っても二度とない挑戦になるなって思えるようになり、すごく魅力を感じるようになりましたね。終わった後に、本当に大変だったし、嫌な思いもさせてしまった後悔もあるけど、やっぱりチャレンジしてよかったねって思うんです。自分1人で世界選手権に行っていた時よりも、何億倍も達成感があったというか。それは夫も私もお互いに感じました。

RLスタッフ:これからも家族での挑戦は続きますね。

三井選手:新しいことにチャレンジすれば、またきっと衝突するだろうけど、挑戦してよかったねって思えるように頑張りたいね、それが私たちらしいね、なんていうところに至りました。

RLスタッフ:私たちも新しい挑戦を応援したいと思います。家族で挑戦を続ける三井選手から、産後ママにメッセージをいただけますか。

三井選手:産後はぜひ「頼る」ことをしてほしいです。私も出産前に「周りの人を頼って頑張るんだよ」「とにかく頼った方がいいよ」と言われていましたが、「そんな頼っちゃダメだよな、自分でどうにかしないと」というのが正直なところでした。でも、出産してみて「そうも言ってられない。自分1人じゃ何もできないな」と実感しています。

RLスタッフ:特に自分で何とかしてきた人ほど、頼るのに抵抗があるとも聞きますが、三井選手は最初からうまく頼ることができましたか。

三井選手:私自身、周りの人を頼ることやお願いするのが心苦しいというか、すごく勇気がいることでした。でも実際に勇気を出してお願いしたり、頼ってみたらありがたいことに、みんな引き受けてくれました。それが本当に支えになったので、勇気を出して頼ってみてほしいと思っています。

RLスタッフ:では、最後に未来のママアスリートにもメッセージをいただけますか。

三井選手:聞きたいことがあれば私に連絡してください!これに尽きます。産後の経験を経て、自分にできることあれば、何かしたいって本当に思うようになりました。

RLスタッフ:それはどんなご経験からのお気持ちでしょうか。

三井選手:以前、ベビーカーを押しながら、公園でランニングをしていたところ、突然女性に声をかけられました。競技者であると説明すると「私も陸上競技者です」と。競技の目標もあるけど子どもは欲しい。しかし妊娠・出産したら体が変わってしまうかもしれない。そう思うと不安で踏み込めないし、情報もなく悩んでいた時に、自分の目の前にベビーカーを押して走っている人がいて「思わず声をかけたんです」と相談されたことがありました。

RLスタッフ:三井選手のお姿が、その方に聞く勇気を与えたんですね。

三井選手:その時、こんな身近に悩んでいる人がいるんだと気づいたんです。アスリートにとって、まだまだ妊娠・出産・自分の競技も含めて相談しにくい状況です。また、身内ではなく、何も自分のこと知らない人の方がかえって相談しやすい場合もあります。だからこそそういう場所が大切だと実感していますし、実はMANの賛同アスリートとして参画することにもなり、私も何らかの力になりたいと思っています。

■Profile

199237日生まれ。日本大学入学後、ライフセービングを始める。ライフセーバー資格取得後、千葉県の九十九里蓮沼海岸で監視活動を経験。ライフセービングスポーツでは、2010年より強化指定選手。2019年に全日本ライフセービング選手権で9連覇。202211月に出産後、わずか半年で世界大会への出場権を獲得し、10月開催の世界選手権パドルボード競技にて金メダルを獲得。2023年も再び世界選手権に向けて日々練習を重ね、将来「ライフセーバーが必要とされない海」の実現を目指して活動中。

2016年: ライフセービング世界選手権オーシャンウーマン 5位入賞
2019年: 全日本選手権200mスーパーライフセーバー 9連覇
2022年: ISA World SUP and Paddleboard Championshipプローンディスタンスレース(パドルボード) 金メダル

※オーシャンウーマンとは:スイム・ボード・スキー・ランの4種目を1名で行います。レース前に実施される抽選で競技順が決定し、その順番によって展開が大きく変わります。各種目の技術と4種目をやりきる体力、そして状況判断力と、総合力が問われるライフセービングスポーツの競技です。

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