【ベネクスのモノづくりインタビュー】キンボー社長 藤堂氏、常務 藤堂氏 12年の信頼と挑戦を超えて--縫製工場が支えるベネクス品質の秘密。 苦労と努力の先にある「信頼の品質」とは。

スペシャル / ベネクス

ベネクスのリカバリーウェアは特許取得の独自開発素材の「DPV576」を含有した特殊繊維「PHT繊維」づくりからはじまります。次いで、PHT繊維を糸にし、その糸を編んだオリジナルの生地づくり、その生地を染色し、縫製――そうしてようやく商品が完成します。

川上から川下までバトンをつなぎながら、すべてを一気通貫で行うベネクスのモノづくり。これまでなかった「リカバリー」という価値を築いてきた私たちのパイオニア精神は⽣地開発や商品づくりにも息づいています。

今回はベネクスの長い製造工程のなかでも、最終工程である、縫製部分を創業当初から担ってくださっている「キンボー」の藤堂社長・藤堂常務にお話をお伺いしました。商品企画メンバーの西浦と井口とともにこれまでの歩みを紐解いています。ぜひご覧ください。

RLスタッフ:本日はお時間をいただきありがとうございます。まず、キンボー社の歴史についてお伺いしたいのですが、創業はいつ頃だったのでしょうか?

藤堂社長:私たちは1964年に創業しました。当時はまだ小さな工場で、地元のお客様に生地を提供するところからスタートしました。創業者である私の父は、「品質第一」をモットーに、少人数ながらも一丸となって仕事に取り組んでいました。

RLスタッフ:60年以上の歴史があるのですね。長い間、様々な変化があったかと思いますが、特に印象的な出来事は何かありますか?

  

藤堂社長:そうですね、平成元年には生地部門を独立させたことが大きな転機でした。また、2002年には中国に工場を設立し、海外生産を本格的に始めたのも印象深い出来事です。

RLスタッフ:なるほど、時代のニーズに合わせて柔軟に変化されてきたのですね。そのようななかで、ベネクスとの取引が始まった経緯について教えていただけますか。

藤堂社長:ベネクスさんとは20137月からお付き合いが始まりました。当時、御社のリカバリーウェアの話が持ち上がり、弊社の縫製技術がそれに適しているということでお声がけいただきました。

RLスタッフ:早いもので干支一周分のお付き合いになりますね。現在キンボーさんでは、ベネクスのなかでもスポーティーなデザインのフラッグシップモデル「リチャージ+シリーズ」や「リフレッシュシリーズ」を縫製いただいています。キンボーさんの主力事業がスポーツウェアや水着の生産という背景もあり、ご縁が始まったと思いますが、ベネクスの生地を初めて見たときの印象はいかがでしたか?

  

藤堂社長:正直、加工が難しい生地だなと思いました(笑)。 でも、水着やフィットネスウェアで培った技術や設備が活かせると感じ、挑戦することに決めました。縫い始めると、非常によく伸びて、くるくると丸まりやすい生地ということもあり、セッティングや調整に少し苦労しましたが、今では安定して生産できています。

井口:伸びる生地はお客様にとって着ごこちがよい反面、縫製時には非常に扱いにくいので、あまり工場さんに好まれないなかでも、キンボーさんがずっと取り組みを続けてくださったから今があります。

西浦:本当にそうですね。ベネクスの生地はいろいろありますが、「リチャージ+」や「リフレッシュシリーズ」の生地は、キンボーさんと取り組み始めた当初は特にカーリング(生地を裁断した部分に生じる丸まり)が強かったんです。

RLスタッフ:そうだったのですね。この生地は軽いのに非常に丈夫で、乾きやすく、しわにもなりにくい。アスリートやお客様からも人気が高いです。キンボーさんの技術力があってこそ、発売当初から今日まで愛される商品が提供できているのですね。

藤堂社長:あの生地はあまり動かさず優しくそっと扱ってあげることがポイントです。弊社では手で伸ばしてカットし、裁断後もそっと運ぶなど、丁寧に管理しています。

RLスタッフ:特性を見極めながら丁寧に扱ってくださったんですね。数量も多いのに手で伸ばしているのは驚きです。

藤堂社長:縫い始めて最初の頃は調整もしましたが、今は生地のトラブルもほとんど感じません。生地を担当されている会社さんが努力してくださっていることもあると思います。

西浦:一度、編立している神戸ニットさんと染工場さんをキンボーさんにお連れしたことがありました。通常、それぞれの工程を担う会社が一堂に顔を合わせて話をする機会はほとんどありません。

RLスタッフ:それはなぜですか?

藤堂社長:何かトラブルがあった際、私たち縫製側は生地生産工程の不具合を疑ってしまうこともありますし(笑)

井口:生地の生産サイドはキンボーさんの生産工程を知らないので、縫製現場で何か起きたんじゃないかと思うこともあります(笑)

RLスタッフ:お互いの工程を知らないために意見に食い違いが生じることがあるんですね。

左:藤堂取締役社長、右:藤堂常務取締役

  

井口:一般的には各生産工程のみなさんで集まることはありません。ただ、キンボーさんから問題の報告があり、生地の生産サイドだけで話しても解決が難しい課題が生じた際に「直接キンボーさんの現場を見に行きたい」とお願いし、伺わせていただきました。発生している問題点や工程を編立工場や染工場の方々に確認していただきました。ちょうど困っていた反物もありキンボーさんがそのまま取っておいてくださったので「現場ではこういったことに困っています」とお伝えし、その反物もそのまま持って帰っていただきました。その場で4社が集まり、問題点についてディスカッションし、今後の対策を話し合うことができました。

藤堂常務:あれは本当にいい機会でしたね。前後の工程でどのような作業が行われているのかをお互いに知る時間になりました。

井口:編立工場さんや染工場さんには「キンボーさんは生地を手で伸ばして裁断しているんですよ」と説明していましたが、「手作業で裁断なんて、そんなわけはない」と(笑)。絶対に機械で裁断しているに違いないと思われ続けていました。納品している膨大な生地量もご存じですから、無理もありません。しかし、実際お越しいただき、目の当たりにされて「本当だったんだ...」とご理解いただけました。

藤堂社長:機械で生地を伸ばすと、伸縮性がいいので生地が伸びてしまい、不安定になるんですよね。だから、時間がかかっても丁寧に手作業で優しく行っています。

井口:こうした顔が見える関係の中でモノづくりができると、課題がとても乗り越えやすくなりますし、よりフレキシブルな対応ができるようになったと思います。

西浦:モノづくりというのは、どうしてもトラブルがつきものです。だからこそ顔が見える関係で皆様のご協力があって、成り立っていると感じます。

井口:何か問題があるとすぐにご報告いただき、「この状況だったらこう改善しなきゃいけないよね」と提案をいただきながら前に進めていることは本当にありがたいです。

藤堂社長:まあいろいろ起こりますよね(笑)。でも、そのトラブルが大事に至らないように解決していきたいと思っています。

西浦:キンボーさんとはお付き合いが長いこともあり、いろいろな苦労を乗り越えてきました。パッケージへの封入が終わった商品のボタンを付け替えていただいたこともありましたし、不本意ながら減産のご相談を急にさせてもらったこともありました。生産担当としてとても苦しい時期で、キンボーさんには本当にご迷惑をおかけしたと思います。そのような時期もともに乗り越えてくださったキンボーさんにはこれから、少しずつですが恩返しをしていきたいと思っています。

藤堂社長:ベネクスさんはこれからもまだまだ伸びるでしょうから、引き続き協力させていただきたいと思っています。私はお客様の商品を自分でも買って試すことにしているので、もちろんベネクスさんのウェアも毎日着ています。

RLスタッフ:ありがとうございます。私たちは生産の現場でもこのような温かく密なコミュニケーション、お付き合いの環境があるからこそ、お客様に喜んでいただける商品を提供できているのだと改めて理解できました。

藤堂社長:ベネクスさんとは非常に密にコミュニケーションを取っています。現場の状況を共有しながら、改善策を一緒に考えることが多いです。こうした協力体制があるからこそ、良い製品を作り続けられるのだと思います。

RLスタッフ:最後に、今後の展望について教えていただけますか?

藤堂社長:品質、納期は工場の命ですので、そこは引き続き対応していきたいと思っています。これからもベネクスさんと協力して、より良い製品を作り続けたいですね。新しい技術や素材にも挑戦しながら、ユーザーの皆さんに喜んでいただけるものを提供したいと思っています。

RLスタッフ:素晴らしいお話をありがとうございました!これからもよろしくお願いいたします。

■Profile

キンボー株式会社 取締役社長

藤堂修

キンボー株式会社 常務取締役

藤堂泰

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