着ごこちが良いだけではなく、ディティールにもこだわった洗練されたシルエットに、デザイン性を引き立てるきれいめな素材感で、ちょっとそこまでがかなう、新商品「リカバリーデイズ」。"一日中ずっと着ていたくなるリカバリーウェア"をコンセプトに、この秋、2024年10月末から発売となるにあたり、コンセプトの裏側や開発秘話を商品企画担当の西浦さんと樋口さん、生地開発担当 井口さんにお伺いしました。
RLスタッフ:この秋発売となるリカバリーデイズ(以下DAYS)について、コンセプトを改めてお聞かせください。
西浦さん:日々のオフタイムにずっと着ていたくなるリカバリーウェアをキーワードに企画しました。ベネクスでは休養学(※1)を軸にした商品開発を行っています。7つの休養モデル(※2)も考える中で、休日ゴロゴロして休むだけではない、それぞれの休み方・過ごし方にフィットするような商品にしました。
RLスタッフ:たとえばどんなシーンを想定していますか?
西浦さん:急な友人の来訪でも着替えずにそのまま対応できたり、旅先の館内着としてなど、ただの部屋着に留まらずに"ちょっとそこまで"がかなうことを意識しました。寝る時間以外のリラックスシーンにリカバリーウェアを着てもらうことで、その時間がプラスアルファの休養時間に変わるというのがポイントです。
RLスタッフ:寝る時に着てもらうだけではなく、新たな休養シーンでの使用の提案は、ベネクスとっても新しいチャレンジだと感じますが、企画で苦労した面はありますか。
西浦さん:寝るシーン以外での着用となるとデザイン面の工夫が必要になります。ただし、ベネクスが大切にしてきたリラックスのためにシンプルであること、引き算していくことも、ベネクスのリカバリー仕様(着ごこちがいいこと)を守るためには絶対に必要だったなかで、違いを出すことに苦労しましたね。
RLスタッフ:"シンプルだけどなんかいい感じ"という印象の裏にはたくさんの工夫や思いが詰まっているのですね。
西浦さん:お手持ちのアイテムと重ねてのコーディネートなどもできるのがDAYSのコンセプトでもあるので、部屋着だけど、ただの部屋着に見えてしまわないように、シルエットを大切にしたり、リブ使いやポケット、付属などを工夫し、ファッション要素を取り入れ、オフに傾きすぎない印象を持たせました。
RLスタッフ:デザインの力が加われば、もっと多くの方がリカバリーウェアをもっと日常に取り込んでくれ、結果、みなさんが効率よく休養を取ることができるようになりますよね。
西浦さん:そうですね。DAYSの開発においても休養モデルに即したデザインがポイントになっています。今後も7つある休養モデルに基づいた商品開発をすすめて行きたいなと思っていて、運動型や親交型、娯楽型など、社会や人との交流があるシーンでも取り入れられる服でありたいと思っています。
RLスタッフ:みなさんのそれぞれのライフスタイルに馴染みやすい商品が今後誕生していくというのは楽しみです。生地もそのコンセプトに沿った、きれい見えする上質な印象です。
井口さん:DAYSはコットンブレンドの生地になっています。コットン混の商品の人気は根強く、継続展開しているコンフォートポンチやリカバリーパジャマ ニットサッカーだけでなく、過去にはスタンダートナチュラル、スタンダードライトという商品がありました。これらの生地に対してのお客様の声や、改善したらもっと良くなるよね、という部分を踏まえて生地開発を行いました。
RLスタッフ:いろいろな改善やバージョンアップを繰り返しながら、さらにパワーアップしたコットン混の生地になっているとは楽しみですね。開発の中で苦労したポイントがあればお聞かせください。
井口さん:開発当初は非常にスムーズで、大きな問題もなく進行していましたが、結果的に量産の立会い検査で見直す判断をし、生産工程を変更しました。
RLスタッフ:企画での状況と量産での状況が異なってしまうということがあるのですね。
井口さん:サンプルと量産では圧倒的に作る量が異なるので、量産ではじめて起きる問題も多々ありますが、工程見直しの規模が今回ほど大きくなることは想定外でした。最初に量産で上がった生地も品質基準上はクリアできるレベルではありましたが、DAYSの企画や製品としての品質を考えた時に、目指していた生地ではないと思ったんです。立ち会った検査の場で、工場さんとその日のうちに解決策になる加工方法を決めて、対応しました。
【生地の写真】
RLスタッフ:素材開発から製品に至るまで責任を持つ、ベネクスらしいお話ですね。そんな苦労の末に生まれたDAYSの生地の特徴を教えてください。
井口さん:コットン面は表目に、肌側はポリエステルという生地になっています。表面のさらっとしたなめらかさは、生地の毛羽対策のためにバイオ加工を施すことで実現しています。毛羽が少なくなると、摩擦が減るので生地の滑りがよくなります。ピリングや毛玉の改善にもつながりますし、レイヤードも意識した商品なので、そういう面でも着ごこちに違和感がない、コンセプトに沿った生地に仕上げています。
RLスタッフ:耐久面はいかがですか。
井口さん:伸縮性を抑えることで、洗濯しても使い古した感じが出にくいので、来客時や人目に触れる時にも、ヨレヨレの部屋着という感じは出にくい生地になっています。
RLスタッフ:生地の面からもしっかりDAYSのコンセプトを支えているのですね。デザイン面での工夫についても教えてください。
西浦さん:トップスには、スタンダードドライプラスでも使用していた、消臭機能のある天テープを使用しています(ワンピースは除く)。DAYS自体は定番的なアイテムで構成していますが、サイズ感はレギュラーからリラックスシルエットになっていて、シンプルなデザインながら、袖口や裾口にフライス、首元にガゼット(首周りの前後にある三角のディティール)を施すなど、シンプルな外観にアクセントを入れることで、メリハリあるデザインにまとめています。
RLスタッフ:引き算しつつも、ポイントで加える工夫が全体のおしゃれな雰囲気を醸し出しているのですね。
西浦さん:アイテムによってはスリットを入れ、動きやすさや突っ張らない機能面での工夫とともにデザインのポイントにもしています。レディースのロングスリーブはAライン、ワンピースは前後差をつけ、ボトムスはテーパードシルエットを採用するなど、細部にもこだわることでスタイルアップもかなえる商品になりました。
RLスタッフ:着た時に自分のスタイルが良く見えるとテンション上がりますよね。それも元気になる大切なポイントかもしれません。個人的にはワンピースに貝ボタンが使われているのも素敵だなと思いました。
樋口さん:ベネクスの商品は機能性もあり、コットン混の商品ではベネクス初の一般医療機器商品でもあります。品質にこだわっているなかで、ボタンなどの付属にも品質のよいものが使われていると、お客様に喜んでいただけるのではと思って採用しています。
西浦さん:ワンピースは階段でも引きずらないなど、生活環境を考えて作っています。色味も、日常に取り込みやすく、心地よいニュートラルカラーを選んでいます。
RLスタッフ:最後にDAYSに込めた思いや、新しいチャレンジがあれば聞かせてください。
西浦さん:ファッションテイストを加えたことで、リカバリーウェアに興味があっても、シンプルすぎるとか、味気ないなと思われていた方々、過去の印象から敬遠していた方々にもこれまでと違う印象を持っていただき、手に取っていただけたらうれしいです。
RLスタッフ:10年以上前、初期のベネクスを知っているユーザーさんはびっくりしますね。
西浦さん:古き良きだけでは、時代にフィットしたものが生まれないと思うので、柔軟な考えを持ちつつ、ベネクスの根幹にあるものは大切に、しっかり守りながら、これからも企画を考えていきたいと思っています。
※1:休養学とは、栄養や運動と並んで健康維持の要素となる「休養」を知識として正しく理解し、実践するために必要、かつ役に立つ学問。
※2:7つの休養とは、活力を上げる7つの方法。複合的に取り入れることで効果が高まる。
(いずれもVENEX Recovery Lab Magazine 片野秀樹インタビュー記事より引用:https://www.venex-j.co.jp/recovery_lab_magazine/rest/detail/221130.html)
■Profile
西浦 周
神奈川県生まれ、横浜洋裁学園ファッションビジネス科 出身。在学中から働いていた神奈川の古着屋の販売員からアパレル業界に入り、その後NYC sohoのセレクトショップが展開するMade in JAPANオリジナルブランドの企画、デザイナー、生産、グラフィックデザイナーを担当。フリーでのグラフィックデザイナー活動も経てベネクスへ入社。アパレルでの経験を活かし商品部の生産管理からはじまり、製品品質・開発・企画までの業務を担当。「着るだけで休養をサポートする」そんなリカバリーウェア ベネクスの製品に感銘を受けるとともに、「すべての人を元気にします」という理念に共感し、「誰もが着てみたくなるリカバリーウェア」を心掛けモノづくりに携わる。
<保有資格>
休養士2級
樋口 真弓
宮城県仙台市生まれ、東京育ち。ドレスメーカー学院服飾造形科 卒業。専門学校卒業後、大手アパレル企業のデザイナーとしてキャリアをスタートさせ、以後、数社で商品企画、生産管理業務に従事したのち、ベネクスに入社。PHT繊維の持つ機能性のすごさと、「世界中で、休養(リカバリー)の常識を変える」という想いのもと、情熱をもって取り組んでいる現場の熱量に感銘を受け、自身もベネクス製品の開発に携わりたいと思い、日々精進中。
<保有資格>
休養士 2級
洋裁技能検定 上級
井口 恵理子
東京都生まれ。文化学園大学 服装学部服装造形学科 出身。3年次から機能デザインコースで人体生理に基づく機能的な衣服について学ぶ。ベネクスでは商品部の生地担当として生地の量産・開発・品質管理を担当。「心地いい」をキーワードに生地の開発に取り組んでいる。1つの生地を量産に繋げるまでに多い時では10回に及ぶ試験を繰り返し、発売(販売)後もお客様の声に耳を傾け、改善を繰り返してよりよい商品をお客様にお届けし、愛用頂けるモノづくりを目指している。
2021年、「疲労を防ぐ!健康指導に活かす 休養学基礎」(メディカ出版発行)を一部執筆。
2022年、「産業保健と看護 第14巻5号」(メディカ出版発行)休養学のススメ 第3回を執筆。
<素材開発実績>
・コンフォートヒート
・コンフォートクール
・コンフォートポンチ
・スタンダードライト
・コンフォートタッチ
・国産コンフォートダブル
・おうちインナー肌着
・おうちインナーブラショーツ
・リカバリージャージ
・リカバリーパジャマ ニットサッカー
・リカバリーDAYS
<保有資格>
・繊維製品品質管理士(TES)
・衣料管理士(テキスタイルアドバイザー)1級
・カラーコーディネーター検定2級
・休養士2級