睡眠の技術「寒い季節だからこそ、お風呂の活用で上質な眠りを」

休息タイプ-休養学

湯船につかると、思わず「はあ〜」。古来入浴文化のある日本人にとって、お風呂のリラックスは格別です。「ココロの体力測定」から1週間の生活習慣についてまとめたところ、高かったのが「湯船に浸かる」意識。清浄やリラックスはもちろんですが、実は今日の疲れを明日に持ち越さないための、大切な"睡眠儀式"でもあるのです。「睡眠負債」という言葉まで流行し、今ますます「眠り」についての関心が高まっていますが、「ぐっすり眠れた」「朝快適に目覚められた!」と感じられるような「上質」な睡眠をお風呂を使って、どうしたら手に入るのでしょうか。

入浴のリカバリー効果の3大ポイントは浮力・水圧・温熱

お風呂に入ると疲れが取れる。シャワーよりもリラックスする。多くの人が体感していることでしょう。心も体も開放的になれるから? もちろんそれもありますが、医学的に証明されている理由があります。入浴時に働く3つの物理的な作用です。

▼"浮力"で筋肉が緩み、心身共にリラックス
湯船につかると、体重が約9分の1程度まで軽くなります。すると、普段、人の体重を支えている筋肉に負担が減り、また弛緩してくるので全身がリラックス。体が癒されることで、気持ちも解きほぐれます。

▼「はあ〜」を促す"水圧"。心肺機能が高まり血行を促進
人が水中に潜ると、水深30cmでは1cm²あたり約1.06kgの圧力が。入浴中も体にはかなりの水圧がかかります。腹部が圧迫されることで横隔膜が上に押し上げられ、肺の活動は約9%減少しますが、これこそが、お湯につかった瞬間に出る「はあ〜」の理由。同時に酸素をしっかり取り込み、呼吸の回数が増えることで心肺機能が高まり血行が促進されます。

▼一酸化窒素を増やして疲労回復を助ける"温熱"作用
1998年、ノーベル医学・生理学賞を受賞したルイス・J・イグナロ博士らの研究により、近年、血管をしなやかに若返らせる物質として「一酸化窒素」が注目を集めています。一酸化窒素は血管に存在し、血管を広げる効果がありますが、入浴の温熱効果で分泌が促されます。血流にのって老廃物が押し流され、コリや疲労がほぐれるのです。

入浴すると、自然と眠りに入りやすくなるメカニズムが

私たちの体は「体温リズム」を持っています。朝の4時から5時ごろにもっとも温が下がり、徐々に上がって夜の6から8時ごろピークに。その後また明け方に向かって下降していきます。つまり、通常眠っている時間は、体温が下がっている時間ということ。言い方を変えれば「体温が下がると眠気を感じる」ようにできているのです。
だから「上質な眠り」を考えるときにまず意識したいのは、入眠前に上手に体温を下げること。そのために有効なのがお風呂です。湯船に浸かると一時的に体温は上がりますが、その後徐々に下がっていきます。その波にうまく乗るように、入眠のタイミングを持ってくればいいわけです。熱すぎるお湯では体温が上がり過ぎてかえって寝付けなくなりますから、以下がポイントになります。

【上質な眠りに誘う入浴のポイント】

●ベッドに入る1時間〜1時間半前に入浴を済ませる
●38〜39℃程度のぬるめのお湯に浸かる
●10〜15分間、全身浴する

1回15分の入浴で指先・つま先まで温かさ長持ち

心臓から送り出された血液が全身をぐるりと巡るのに、平均で約1分間かかると言われます。だから、入浴時間がそのまま血液循環の回数に。10分お湯につかれば10周、30分つかれば30周という具合ですが、先ほどのお湯の「適温」と同じように、入浴時間にも適した長さがあります。リラックス湯温「39℃15分間」と、やや熱めの「42℃3分間」の入浴前〜入浴後の体温変化を比較した実験によると、入浴直後は「42℃3分間」の方がしっかり温まっていますが、入浴後30分経過すると、温かさが長持ちしているのは「39℃15分間」の入浴。体の芯までしっかり温まっていることも報告されています。

でも入浴しても、どうしても寝付けないときは、こんな方法もあります。好きな匂いを嗅いでみる。小さな音で好きな音楽を聴いてみる。また、何か心配ごとで頭がいっぱいになって眠れないなら、不安要素が何なのかを洗い出してみるなど。あるアスリートは、一度読んだ漫画を見返したりするそうです。ストーリーがわかっていますから、気楽に読めるんですね。こんな風に、お風呂にプラス、自分自身にぴったりくる睡眠儀式をリカバリーウェアと一緒に見つけられると、より安心&リラックスして眠りにつけるかもしれませんね。


執筆・監修:オフラボSTAFF

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